自己実現のためのひとつの道
大学編入試験は、現在の自分の状況に疑問や不満をもつ多くの大学生にとって、そして、社会に出てからあらたな道を進もうとする方にとって、自己実現のためのひとつの道です。また、短大生や高等専門学校生、専門学校生(専門士資格取得者)にとっては、卒業後の進路選択肢のひとつとなっています。高校専攻科修了者にも編入への道が開かれました。今では多くの人が、それぞれの目的をもって、編入試験にチャレンジしています。大学入試の結果だけで、高校卒業後の学校生活がすべて決まってしまうわけではありません。皆さんには大学編入によって第二の選択のチャンスがあるのです。
私は、予備校の大学編入コースで30数年にわたり、多くの学生を指導してきました。将来の展望も含めてはっきりとした目的をもった学生に驚き、逆に学ぶこともあれば、最初はただ四大に進学できればよいと考えていた短大生が日一日と目的意識を育てていく姿に目をみはることもありました。 編入試験の受験によって自らの人生を切り開いていく姿には感動があります。編入について知ることは、皆さんの人生の可能性を広げることにつながるのです。このブログを読んだ皆さんが、大学編入試験で成功する、つまり、新しい自分を発見することを、心から願っています。
大学編入試験の実際
残念なことに、すべての大学が大学編入試験を実施しているわけではありません。さらに、実施状況や受験資格は大学によってさまざまで、同じ大学内でも学部学科で異なることがあります。大学編入に合格するための第一歩として、まず、編入試験について知ることから始めましょう。
編入試験の実施パタ-ン
編入試験の実施パタ-ンは、大きく分けて次の5つです。
①毎年全学部学科で実施
②毎年一部の決まった学部学科のみで実施
③年によって実施学部学科が異なる
④試験実施の有無自体が年によって異なる
⑤併設短大や大学内部での内部編入のみ実施
大学編入は、教育法で編入定員の設置が認められるようになる以前から、欠員募集というかたちで行われていました。一般入試での入学者が予想を下回ってしまった、退学者が出た、などで、大学では欠員が生じることがあります。編入試験はその欠員補充のために大学内部の規定で実施されてきました。そのため、③④の大学があります。志望大学が定員を設置して大学編入を実施しているのか、それとも欠員募集なのか、これは合格者数にも大きく関わるので、確認しておくことが必要です。
編入試験の出願資格
募集対象も大学でさまざまです。内部(同じ大学の学士、併設の短大)からのみ、募集する大学もあります。
外部から受け入れる場合は、
①大学卒業(見込)者のみ受け入れる。
②短大卒業(見込)者のみ受け入れる。
③大学・短大・高等専門学校卒業(見込)者を受け入れる。
④上記③に加えて大学在学者を受け入れる。
⑤上記④に加え専門士を受け入れる。
などのケ-スが考えられますが、これも同一大学の学部学科によって異なることがあります。また、より具体的に出願資格を定めている大学もあります。例をあげてみましょう。
①短大生については同系統学科出身者のみ出願を認める。(英文学科なら短大英文科・英語学科出身者)
②学士は出身学科とは異なる学科への出願を条件とする。
③大学在学者については、在籍大学での取得(見込)単位数に条件をつけ る。(3年次60単位以上、2年次30単位以上など)
④在籍大学(短大)での取得(見込)単位の内容に条件をつける。(英語何単位など)
さらに、大学・短大卒業(見込)であっても、編入年次は必ずしも3年次ではなく、2年次となる場合があります。大学編入試験を実施している=自分が受験できる、ではありません。しっかり、情報収集する必要があります。
編入試験の実施時期
編入試験の実施時期は大学によってさまざまです。また、全学部学科、同じ日に試験を実施する大学もあれば、学部によって試験日程が異なる大学もあります。国立大学の場合は、ほぼ学部別の実施ですし、私立大学でも少なくありません。
一般的に理工系学部は実施が早く、特に国公立では、6月から7月が中心となります。したがって、受験準備も早くスタートしないといけませんね。
文系は10月から12月までの年内、2月から3月にかけての年明けと2回の山がありますが、国公立では多くの大学が年内の実施、私立についても試験実施時期は早まる一方ですから、年明けは少数です。
試験日程には注意が必要です。前年より1ヶ月以上早まることもあります。大学の編入試験要項はしっかり確認しましょう。
さらに、私立大学の内部優先試験や短大や専門学校、高等専門学校在学者を対象とした推薦入試は一般編入試験の前、7月から10月にかけて行われるのが普通です。理系の場合はさらに早くなります。定員を多く設置している大学の中では、年2回以上試験を実施するところもあります。
●入試験の試験科目
筆記試験は語学(主に英語)と専門科目が主流です。ただし、文学部などでは、英語に代えて第2外国語でも受験できるケ-スもありますし、ごく少数ですが、語学を2科目課すこともあります。
専門科目については、大学1・2年での履修範囲と考えればよいでしょう。また、専門科目に代えて小論文を課すことがありますし、専門科目に小論文がプラスされることもあります。前者は国立大学文学部の学部共通問題、定員を設置している私立大学などでよくあるケ-スです。
専門科目の出題範囲は学科や大学によって様々です。
理系について言えば、数学・物理・化学・生物から1科目、あるいは2~3科目の組み合わせの場合もありますし、いわゆる学科の専門科目、機械工学科なら機械工学などが出題されることもあります。
文系については、たとえば英語・英米文学科なら英語のみの大学もあれば、英語以外にリスニング、英米文学史・英語学などの専門、小論文(学科内容に関連したもの、または、特に専門性のない文学部共通のもの)などが出題される大学もあります。さらに、英語による面接を課すこともあります。受験大学に適した受験勉強を行っているかが、大事なポイントです。そのためには過去問題のチェックが大切です。
小論文については、人文系の学部学科では、志望理由や研究テーマを書かせるタイプや課題文を読ませて論述させるタイプが多くみられます。社会系の学部学科では出題の中心は学科に関連した時事問題ですが、国立大学法学部を中心に、課題文型の出題も多く見られます。いずれも受験生の目的意識・問題意識、受験学科に関する関心を問うもので、課題文型の場合は一般教養レベルの知識や読解力までみていることになります。
受験科目の少ないことが編入試験の魅力ですから、受験大学選択の際は、試験科目をしっかりとチェックして併願校を選ぶといいでしょう。
編入後の単位認定
単位認定とは、編入前の大学で取得した単位を編入後の大学でも認めてもらえるシステムですが、単位認定の方法は大学によって異なります。大ざっぱに次のように区分できます。
A、一括認定・包括認定
卒業に必要な単位のほぼ半分にあたる60単位前後を認める認定方法です。この場合は他学科からでも同系統学科からでも同じ程度の認定になります。
B、読み替え認定
①出身校での履修科目と編入先の大学の科目名が一致している、あるいは 内容的に振り替えが可能な場合のみ認められる認定方法です。この場合は同系統学科からだとかなり認定されるが他学科からはあまり認められません。
②科目名だけではなく講義内容まで似ていないと認めない認定方法です。この場合は同系統学科からでも多くは認められません。他学科からだと卒業までに3年かかることもあります。特に文系から理系への編入は3年かかると考えたほうがよいでしょう。
編入試験合格の1、2、3
編入を成功させるポイントを3つ挙げてみましょう。
第1に情報量。各大学の編入試験実施状況、試験日程、受験資格、過去問題など。
第2に、一般入試とは全く異なる編入試験の出題傾向を知り、それに合わせた適切な勉強をすること。
第3に、何のための編入受験なのか、大学で何を勉強するのかについて、明確な目的意識を持つこと。
どのような試験が実施されているのか知らなければ、受験もできません。また、たとえ知っていたとしても、的はずれの勉強をしていたのでは合格はできません。そして、明確な志望理由がなければ、周囲が就職活動をしたり、学生生活を楽しんでいる中で、受験勉強に打ち込むことはなかなか難しいのではないでしょうか。
まず情報収集からスタ-トです
編入試験は一般入試とは異なり、受験雑誌が出ているわけではありません。インターネットの情報もすべてが正しいとは限りません。各個人で、志望大学の試験日程や試験科目、受験資格について確認し、編入試験要項、過去問題を入手することになります。それでは、編入に関する情報は、どうやって入手すれば良いのでしょうか。
志望大学の新年度の試験日程や試験内容に関する情報を正確につかむには、その大学のホームページを頻繁にチェックするしか方法がありません。最近では、大学の入試課に電話すると、「ホームページを見てください」と言われます。試験要項や過去問題の入手方法もホームページで確認します。
当然、入試情報をチェックすることになりますが、国立大学は多くの場合、各学部のページに編入試験の情報が掲載されています。また、何年度の情報かも、注意する必要があります。今年は2023年度、受験する編入試験は2024年度編入試験です。ホームページでは、新年度の情報に更新されるまで、前年の情報があげられています。それを新しい情報と勘違いする人は少なくありません。
なお、大学のオープンキャンパスなどでも、情報の収集は可能です。また、インターネットで検索すると各予備校が作成している入試日程など、さまざまなデータの入手が可能ですが、年度には注意してください。また、必ず自分で間違いがないか、確認しておくことをお勧めします。
大学編入のメリット
大学編入の魅力とは何でしょうか。
それまでの学歴を生かせる
編入試験の良いところは、受験者が、大学1年生からやり直すのではなく、それまでの大学や学校での取得単位を認められて、3年次(あるいは2年次)に入学できることでしょう。
例えば、大学2年在学中に、現在と異なる学科で勉強しようと考えたとします。大学編入試験の存在を知らない人は、失敗した時を考えて大学で単位を取りながら一般入試を受験する、いわゆる仮面浪人でチャレンジし、合格すると最初からやり直すことになります。たとえ1年で合格できても、大学での2年間の学習は全く認められず、大学卒業までに6年を要します。
しかし、編入という制度を知っていれば、大学2年から他大学の3年に進学し、もとの在籍大学での取得単位を生かすことができ、4年間で大学卒業が可能です。また、語学や体育、共通科目などの一般教養を一からやり直す必要はなく、入学してすぐに、新しい分野の専門の勉強に取り組むことができるのです。
大学や短大を卒業した社会人が、異なる専門分野を勉強したいと考えたときも同じです。編入制度を利用すれば2年で卒業が可能で、学費・時間ともに少なくてすみ、専門科目を集中して学ぶことが可能です。
本当にやりたいことに挑戦できる
入学後すぐに専門科目から学ぶことのできる編入試験の一番のメリットは、本当に取り組みたいことに挑戦できる、ということでしょう。
一般入試受験時に、すでに自分が勉強したいことがはっきりしている、将来の目的が決まっている、という方が希望通りに大学へ進学できた場合は、いうことありません。しかし、たまたま受かったから○○学科へ入学した、高校で推薦入試を勧められたから言われるままに受験して合格した、周囲が皆大学へ進学するから特に目的はないが大学へ進学した、という方は決して少なくないと思います。入学してから自分の勉強したい内容ではなかった、将来希望する進路とは関係のない学科へ進学してしまった、本当は別のことを勉強したかったのに就職に不利と考えて興味のない学科へ進んだ、と後悔する方も多いのではないでしょうか。
短大や専門学校へ進学した方なら、最初は勉強は2年で十分だと思ったけれど、もっと専門的な勉強を続けたくなった、という方もいるでしょう。また、本当は四年制大へ行きたかったのに短大しか受からなかった、○○学科へ進学したかったが、△△学科しか受からなかった、という不本意進学の方もいることでしょう。
社会に出て、働く中で、様々な経験を積む中で、本当にやりたいことが見つかる方もいます。
そういう方にとって本当に学びたいことを学ぶことのできる大きなチャンスが、編入試験です。しかも、それまでに短大や4大で修得した単位を生かすことができます。
もちろん、今の大学と同じ学部学科を目指すこともできます。私は多くの学生から、「周囲の学生が勉強に熱意を示さない」、「やる気が感じられない」、「もっと刺激のある大学で勉強したい」という言葉を聞いてきました。学習環境を現在よりも学びたいものにとって、有益なものに変えたい、そういう方にとっても、大学編入試験はチャンスです。
受験のための勉強は編入した後にも役立つ
一般入試の受験勉強を思い浮かべてみましょう。高校3年生が受験する一般入試では試されるのは高校での勉強範囲で、私立文系であれば受験学科に関わらず、英・国・社の3教科が一般的です。いずれも出題分野は広く、暗記の試験です。法学部を受験するにもかかわらず、古文の単語を暗記しなくてはなりません。しかし、受験が終わればそれっきりです。
それでは大学編入試験はどうでしょうか。3年次に入学する編入試験の試験科目は、大学1・2年での学習範囲であり、一般的に語学(語学検定利用大学もあり)と専門科目(または小論文)です。専門科目はこれから自分が進学を希望する学科の内容で、もともと興味のある勉強です。また、受験勉強した内容が入学後にも生きてきます。そこが一般入試との大きな違いなのです。
編入試験は一般入試よりやさしい?
思わぬメリットもあります。それは、一般入試を受験した時の偏差値では決して受からなかった大学にも、合格の可能性が十分にあるということです。現に短期大学や高等専門学校から多くの方が国立大学に進学しています。一般入試では思うような結果が得られなかった方も、国立大学への編入に成功しています。一般入試では偏差値が40そこそこだった、という方が、人気の高い私立大学や国立大学へ合格することが編入試験では可能なのです。このように一般入試では考えられない結果を得られるのが、編入試験の大きなメリットでしょう。
私が予備校で編入試験の指導をしていた30数年間、その間に本当に多くの人達が、編入試験に合格し、新しい自分、新しい道を見いだしてきました。その喜びの声と同時に、「高校や短大の先生に合格したことを報告しても、まさかと信じてもらえなかった」「絶対に受かるはずがないといっていた周囲の目が、編入試験に合格したことで変わった」このような感想をしばしば耳にしました。一般入試の常識では理解できないような可能性を編入試験は持っているわけです。
なぜ、編入試験なら合格できるのか
それでは、なぜ、このような結果が得られるのか、それにはいくつかの原因があります。
第一に、試験科目は専門と英語です。前者は大学・短大で初めて学ぶ内容ですから、スタートラインは皆一緒です。英語については、大学での英語が講読となることから長文読解が中心になり、多くの場合、一般入試とは形式が異なります。一般入試の暗記型の試験から、記述型になります。さらに、英語試験に代えてTOEFLやTOEICのスコア提出とする大学も増えています。地道な努力が成果に結びつくのです
こういう試験であるからこそ、その学科での勉強に目的意識を持っている人達にとって、願ってもない試験なのです。学生だけではなく社会人にとっても同様でしょう。 第二に、受験者層が現役生や高卒生、誰もが受験する一般入試とは異なります。進学大学に満足していたら、大学編入を考えることはありません。たとえ、今の大学に不満を抱いていても、多くの人はアルバイトやサークル活動で大学生活を楽しみ、もう一度、受験勉強をしようとは考えないでしょう。編入試験の受験者の多くは、入試の結果に納得していない、その気持ちを進学後も持ち続けている、一部の人たちです。
決して、偏差値で合否が決まるのではない、意欲の高さで結果を出すことができる、それが大学編入試験です。
四年制大学からの編入
編入受験者の大半を占めるのが四年制大学からの編入です。よく聞かれる質問をピックアップしてお話します。
受験資格で留意することはありますか
卒業・修了(見込)が条件である他の受験資格者とは異なり、四年制大学在学者の場合には、受験資格に大学での取得単位数を規定されるケ-スがほとんどです。
規定単位数は大学によってさまざまで、2年次修了(見込)とだけ表記する大学もあります。一般的には3年次で62単位以上、2年次で31単位以上取得(例外を除き見込可)です。つまり、3年次の場合、大学4年間で履修する単位の半分近くを、取得していることが求められるわけです。見込みでもよいわけですから、2年次の途中で3年次編入試験を受験することはできます。
ただし、62単位取得見込みで受験して合格したとしても、最終的にもとの大学で62単位の履修できないと合格が取り消しになります。
四年制大学からの編入にあたり、何か問題はありますか。
編入試験受験の際に現在の大学から入手して志望大学に提出する書類は、在学証明書、成績証明書、単位取得(見込)証明書などです。
ところが、編入実施大学の中には在籍大学の受験許可書を提出させるところがあります。これがネックです。というのは、私立大学の全てが他大学への編入を無条件で認めているのではないからです。学長の許可が必要であったり、学則で禁止する大学もあります。禁止している場合には、受験許可書の必要な大学は受験できません。それどころか、在学証明書や成績証明書さえ、入手できないことがあります。
学生が大学入学後も、より学習環境のよい大学への移動を希望することは、当然の権利であると考えます。しかし、大学側にすれば、一人退学すればその分授業料収入が減少するという、切実な問題があるわけです。まず、自分の大学が他大への編入を認めているのかどうか、情報を得ましょう。
認めていない場合は、志望大学に問い合わせてみましょう。大学によっては、正式な書類に代わるもので、受験を認めてくれることがあります。実際に、編入を禁止している大学からも、他大へ編入する学生は大勢います。ただ、勉強面以外でもハ-ドルがあることは否めません。編入を実行するにあたっては、時には他の受験資格者以上の努力を要すると言えるでしょう。
在籍大学と同じ学科への編入はできますか。
受験資格としては、一般的には問題ありません。
注意が必要なのは面接や事前に提出する志望理由書です。面接などの際に、どうして今同じ学科にいるのにあえて編入するのか、問われることがあります。その時に、「この大学の方が有名だから」では、通りません。大切なのは勉学の面からの志望理由です。特に同系統の場合、「今の大学に不満」ではなく、「受験大学の方が、自分の勉強したい内容に適している」ということを、説明できるようにしておく必要があります。
短期大学からの編入
短期大学からの編入について、よくある質問をピックアップします。
指定校推薦について、教えてください。
編入定員を設置する四年制大学では、指定校推薦、公募推薦、推薦編入などを実施するところがあります。
指定校推薦には、定員を持つ大学が特定の短大に対し推薦枠を与える場合と、併設校、系列校に対する推薦枠、同じ宗教法人系列での推薦枠、また時には大学の所在地に近い短大に対する地域指定があります。自分の在籍する短大がどのような推薦枠を持っているのか、早めに短大で確認しておきましょう。前年にあったから、今年もあるとは限りません。逆に、急に実施することもありますから、掲示には注意しましょう。
指定校推薦の場合は、まず、短大内部で選抜があります。これは多くの場合は書類選考と面接ですが、当然、短大での成績が重視されます。また、英語の単位を取っていないために推薦から漏れるなど、履修内容が問題になることもあります。短大1年のうちから情報を収集して、関心のある大学については、どのような科目を履修しておくとよいか、確認しておきましょう。編入後の単位認定も視野に置いておくとよいでしょう。
短大1年で受験できる大学はありますか。
四年制大学の1年在学者には2年次編入の道も開かれていますが、短大生を対象とした2年次編入は、実はほとんどの場合が、短大卒業(見込)を受験資格としています。勘違いしないように注意しましょう。
ただし、短大1年からの2年次編入を認めている大学も皆無ではありません。
就職活動との両立は可能ですか
これは難しい問題です。しいて、私の経験から答えるとしたら、やめた方がよいでしょう。どっちつかずに終わるケ-スがあるからです。編入の勉強をしていれば就職活動が気になる、就職活動をしていれば編入のことが気になり、なかなか集中できません。
中には編入の滑り止めとして就職活動をする人もいますが、このケ-スでは、いざ就職が決まると、それで満足して編入はあきらめてしまう方もいます。また、短大の推薦で就職が内定した場合は、自分の都合で取り消すと短大にも迷惑がかかります。
逆に、就職が決まらないから編入、というのも、受験勉強が間に合わない、情報不足などで、最初から編入を目指していた場合に比べると明らかに不利です。いずれにせよ、編入も就職も中途半端な気持ちで取り組むべきではない、ということでしょう。
学士編入
大学などで学士号を取得している方が受験できる編入試験です。学士取得予定の卒業見込みの方も対象になります。
学士編入の受験資格で、注意することはありますか
ここでは二つほどあげておきます。
まず、学士の場合、同系統学科出身者には受験を認めない大学があります。たとえば、中央大学の学士編入では、編入試験要項に「卒業した学科と同一の学科へは出願できません」とあります。これは、他大学ではあっても、すでにその学科の学士となっているわけですから、再度同じ学科へ入ることは認めないという考え方でしょう。学士については、卒業した学科と同一学科については、受験できないことがあると、認識しておきましょう。
次に、学士の場合は、学士編入と銘打っていなくても、短大生、大学在学者を対象に一般編入を実施している大学であれば受験が可能です。たとえ、受験資格に大学卒業(見込)者となくても、大学2年以上在学者と同等以上の資格として、受験できます。ただし、短大卒業(見込)者のみ、あるいは高等専門学校卒業(見込)者のみを対象に編入試験を実施している大学は、受験できません。
学士編入のメリットは何でしょうか。
学士編入のメリットは、他の資格者が受験できない大学を受けることが可能な点でしょう。
一般編入が実施されず、学士編入のみを実施する大学として、東京大学、早稲田大学、京都大学など、魅力的な大学名があげられます。なお、京都大学法学部、経済学部は一般編入を実施するなど、学部学科で実施状況が異なります。
学士編入を選ぶべきでしょうか、大学院進学でしょうか。
学士ですから、当然大学院の受験資格を持っています。学部でさらに2年間勉強してから大学院へ進学するよりも、直接大学院に進学して、高度な教育を受けたいと考えるのは当然のことでしょう。
しかし、卒業する学部と学びたい専攻が異なる場合は、いきなり大学院に進学することに不安を感じるでしょう。
法学・経済学その他、社会科学系の学問を勉強する場合は、大学での専攻分野に関係なく、筆記・面接・研究計画書などを総合的に判断した入試結果で、大学院に受け入れられる傾向があります。したがって、当日の試験でよい成績を修めれば、文学部出身者が大学院では法学研究科に進学することも可能です。しかし、大学院の文学研究科に進学を希望する場合は、社会科学系学部から、あるいは他専攻からの受験は不利なケ-スが多くなります。文学研究科では卒論も審査の対象になることがありますし、より基礎学力が重視されるからです。まして、文系学部から理系大学院への進学は、非常に困難でしょう。一方で、受け入れる、受け入れないは、これも各大学院、各研究科、あるいは実際に指導に当たる大学教員の考え方次第という面があります。
つまり、大学院に進学する、編入で学部の3年から勉強し直すか、その選択は進みたい分野や受験大学によって左右されます。
一方で、大学院入試も多様化しており、書類提出と口頭試問のみで受験できるところも、特に学部の設置がない大学院大学などを中心に多くなりました。このような大学院は学際的な学びの可能なことが多く、研究科によっては文理融合で様々な専門科目を横断的に学ぶことができます。文系出身であっても理系の学びが可能です。かつ、大学院大学は知名度の高い大学に多いのも特徴です。まずは情報収集です。
しかし、進学したい専攻に関する知識が少なく、基礎からきちんと勉強した上で大学院へ行きたいと考えるのであれば、学士で編入してじっくり勉強するのは、悪くないと思います。専門知識に欠けていれば、筆記や研究計画書が志望大学院進学にあたりネックになります。また、大学院は一般的に内部進学が有利ですから、学部の3年から入学することで、その大学の大学院への道が開けることもあります。
高専からの編入
高等専門学校からの編入の状況について、教えてください。
国公立大学の工・情報系の学部学科では、高専出身者のみを対象とした一般編入、推薦編入などを実施するところが多く、高専生は早くから受け入れられています。中でも長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学は、高等専門学校の卒業者等を第3学年に、定員の過半数として受け入れることを目的としています。国公立大学の同系統学部学科へ進学を目指すのであれば、高等専門学校でよい成績を修め、教員から積極的に進路指導を受けることがベストです。実際、高専からの大学編入では、約80%が国立大学へ進学しています。
一方、私立大学の文学部系統などでは、受験資格に高専出身者を含まないこともあります。しかし、短大生を受け入れている国公立大学であれば、どの学部もほぼ受験可能です。高専で学んだことに限らず、経済学部、法学部など、さまざまな学びを選択することができます。ただし、単位認定の厳しい大学の場合、卒業に3年かかることもあります。2年間での卒業を目指すなら、編入後の単位認定に関する情報も収集が必要です。
専門士の編入
専門士とはどのような資格ですか。専門学校に行けば、編入ができるのですか。
専修学校は「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること」を目的に、専門的な職業教育の場を提供してきました。その専修学校の中でも、専門学校とは高等学校卒業程度の人を対象とする専門課程を置く学校を指します。専門学校においては、修業年限が2年以上で、かつ、卒業までの総授業時間が1700時間以上である専門課程の修了者については、専門士の称号が与えられます。平成10年6月の学校教育法の改正で、専門士に大学への編入の道が開かれました。
専門学校で技術を身につけ、資格を取得した結果、より、理論的な学習を希望して大学をめざす方、経済的な事情から専門学校へ進学したけれども、もともと四年制大学での勉学を望んでいた方、さらに、社会に出て実務に関わっていく中で、大学での勉強を考えるようになった方、そのような皆さんにとって、専門学校からの編入は、将来に向けて大きな選択肢になります。ただし、あくまで専門士の資格取得者に限られますので、ご注意ください。
出願に際して、どのような書類を請求されるでしょうか。
修了(見込)証明書、成績証明書は、他の資格者と同様に必要になります。さらに、ほとんどの大学が、受験者が専門士の称号が与えられる、2年間で総授業時間数が1700時間を超える課程に在籍している、つまり学校教育法第82条の10の規定による受験資格があることを、当該専門学校長が証明する書類の提出を求めています。
専門士の編入で留意することはありますか。
一口に専門学校といっても、工業・医療・商業実務その他8つの分野を擁し、設置学科はさまざまです。専門士の場合、大学の英語学科、国際学科系統に進学する方が多く見られます。また、経済経営学科、工学・情報そのほかの理系各学科、デザイン・芸術系学科に編入する方も目立ちます。多くの場合、同系統学科からの編入と考えられます。看護・リハビリなどの医療系については、ほとんどの大学が国家資格取得者を対象としているため、受験者の多くは同系統の専門学校出身者です。また、社会福祉系の大学には、専門学校出身者は同系統からのみ受験可とするケースがあります。このような同系統からの編入については、多くは2年間での大学卒業が可能です。
しかし、中には大学での単位認定にそぐわない分野分類もあるでしょう。たとえば、理容など実技の習得を目的とした学科に在籍している場合、大学に同系統学科はありません。他学科を目指す場合、編入後に単位認定がどうなるかを、事前に確認しておくべきです。進学先の学科と全く異なる実技の勉強をしていても、履修内容に関係なく一括で単位を認定して2年間で卒業できる大学もありますし、認定される単位が少ないため、卒業まで3年かかる大学もあります。中には、同系統出身であるなしに限らず、専門士は2年次編入とする大学もありますので、注意が必要です。
社会人編入
一般編入とは異なる社会人のための編入制度についてお話します。
社会人編入の実施状況を教えて下さい。
社会人であることを受験資格とした社会人特別選抜編入(以後、社会人編入)の実施大学は、残念ながら少数です。試験内容については、語学を免除し小論文・面接で受験できる大学もありますが、英語・専門・面接と、一般編入と全く同一の試験を受験しなければならない大学もあります。したがって、多くの方には、社会人編入だけの受験ではなく、一般編入との併願をお勧めします。
とは言え、社会人は個人の事情で通学可能な範囲が絞られる、受験勉強に多くの時間を割けない、などのケースも多く、結果的に社会人編入単願となる方が多いのも確かです。大学の選択条件を明確にした上で、志望大学を絞ってその大学の対策に注力することも一つの方法でしょう。
社会人編入(特別選抜)の具体的な受験資格は?
社会人編入の社会人とはどのように規定されているのでしょうか。これは大学によってさまざまです。年齢や社会人としての実務経験年数などを条件にする大学、短大・大学卒業後に、決まった年数が経過していることを条件にする大学、また、夜間部の学科などの場合は、在職中であることや職場の推薦が得られることを条件とすることがあります。
なお、アルバイトを実務経験として認める、認めないは大学によって異なります。主婦の場合は社会人として認める大学が多くなります。
学歴としては、大学・短大・高等専門学校卒業者と、大学に2年以上在学し、規定の単位数を取得して退学した者の受験を認める大学もかなりあります。興味のある大学があれば、まずは調べてみることです。
一般的には、昼間の学部学科の場合は、勤務しながらの通学はできませんから、現在、定職に就いてなくても受験できることが多くなります。この場合は、年齢制限、短大や大学卒業後の経過年数、社会人としての実務経験年数が条件になります。具体的には、年齢は25歳以上とする大学が多いのですが、中には30歳以上とする大学もありますし、短大・大学を卒業していれば、受験できる大学もあります。卒業後の経過年数と実務経験年数は、3年以上、あるいは2年以上の規定が多いようです。中には職場推薦があって在職しながら通学できることを条件にする大学もあります。情報収集が大切です。
夜間の学部学科については、その性質上、現在在職中であり、入学後も仕事を続ける社会人を募集対象とするケ-スが目立ちます。したがって、在職証明書や職場の所属長の推薦が必要になるケ-スが多くなります。そのかわり、年齢など、その他の制限は緩めです。
社会人編入で留意することは?
社会人編入では、一般編入よりも、より志望理由が重視されると考えて下さい。したがって、ほとんどの大学が、願書提出時の書類に志望理由書を含めていますし、面接も実施します。中には書類審査と面接のみの大学もあります。
志望理由のポイントとして、「社会人としてなぜ、編入を希望するのか」ということが、問われます。ただ学歴が欲しいとか、資格が欲しいでは通用しません。大学の志望学科で具体的に何を研究したいのか、それが社会人としてのキャリアとどう関係しているのか、明確にすることが大事です。
ただし、志望学科が文学部などの場合は、なかなか仕事などとの結びつきで説明することができません。こういうときは、その学科での勉強にどの程度興味を持っているのか、関心や知識の程度が問われます。事前に自分の関心事を含めた専門分野の勉強が必要になります。
1年からの社会人入試と編入試験のどちらを受験した方がよいでしょうか。
短大既卒の方から、よくこのような相談を受けます。まず、一般論として考えてみましょう。大きなポイントは、難易度が大きく異なるということです。社会人入試の試験科目は英語(TOEFL・TOEICなどを含む)・小論文・面接ですが、英語については近年、課さない大学が多くなりました。それに対して3年次から入学する編入試験では、たとえ小論文・面接のみの大学でも、口述試験や志望理由書対策、内容が専門的になる小論文の対策で専門科目の勉強は必要になりますし、志望学科によっては、社会人特別選抜だけではなく一般編入を受験しなければなりません。したがって、試験のやさしさで選ぶのなら社会人入試です。しばらく勉強から遠ざかっていた方が、仕事を持ちながらの受験で勉強時間もあまりとれない、という場合は、編入試験の内容は負担が大きいものと思われます。また、一般編入を実施していない大学を受験できることもあります。
ただし、忘れてはならないのは、社会人入試の場合は大学1年からの入学で、卒業に4年間かかるということです。当然、学費も倍かかります。また、既に履修済みの体育や一般教養も勉強し直さなければなりません(ただし、出身校での単位を認定する大学もあります)。さらに、出身校を卒業して年数が浅く、社会経験の少ない場合や、学士については、面接で、なぜ編入試験を受けないのか、問われることがあります。その時、試験がやさしいからと答えていたのでは、熱意を疑われてしまいます。逆に、出身校卒業後、年数がかなり経っている方が編入試験を受験すると、なぜ社会人入試で1年からやり直さないのか、と面接で問われることもあります。
以上から、この質問に対する答えは、受験者の現在の学力、志望学科・大学、学費がどの程度準備できるか、など、個々のケ-スで異なるということになります。まず、自分の現在の学力はどの程度か、試験までどの程度勉強時間がとれるか、などを、客観的に判断することから始めましょう。
また、志望学科によっては受験できる大学が少ないこともあります。そういう場合は併願することも考えるとよいでしょう。